「無限に広がる宇宙(そら) 迷わず進もう」
はじめに
侑、歩夢、そしてせつ菜にスポットの当たるここ数回。*1
全話までの成長が鍵になるというのはシリーズものの醍醐味でもありますが、特にこの第12話はね。
私から言えることは、一言だけです。
「両手を広げて 解き放した昨日が 翼になる」
「重ねた出会いが この瞬間(とき)彩るよ」
「私だけの光信じて DIVE!」
ぶろっく「“DIVE!”じゃん……」*2
……危うくここにきて第3話の歌詞読解で終わるところでした。なんでや!
歩夢と侑のモヤモヤ
歩夢「私だけの侑ちゃんでいて?」
そう語る歩夢の腕には、力が入っていなかった。*3
当たり前の毎日?
翌朝の歩夢。何事もなかったように、フェスティバルの話題を侑に振ります。
けれど、侑も歩夢も、何も気づかなかった時には戻れない。
歩夢「離れたくなんて、ない……」
言葉にも、態度にも、どこか違和感の残る二人なのでした。
心ここに在らず。
せつ菜から見た侑はこういうとき、いつだって目を輝かせている。よほどのことがあった、と察しはつくでしょう。
こちらも。
この辺りは、歩夢と侑が「同じ」なところですよね。
ずっと隣にいて、同じものを見て、同じことをして過ごしてきたふたり。少しずつ形が変わってきているけれど、離れていても繋がっている部分はあるんだなあ。*4
ここの「ひっ」が可愛い。
それにしても……
改めて、歩夢と侑が一緒にいないシーンが増えたなあって感じますよね。
今まででどちらかしか登場しないシーンというと、思い浮かぶのは第2話で歩夢が自主練をしていたシーンや、第3,10話で侑がピアノを弾いていたシーン*5。というか、思い浮かべようとして思い浮かべるものであって、基本的には一緒にいるので、いない方が違和感ありますね。なんなら「第4話以降の個人回で侑が一番のキーパーソンとならないのは、彼女が基本的には歩夢と一緒にいる人だから」なのでは、とさえ思えてしまいます。多分そんなことないけど。
自分に素直になりたい
今日子「歩夢ちゃんの良さをアピールできるものにしたいんです!」
第6話、ジョイポリスで出会ったときから歩夢のファンを公言していた、一年生の今日子(情報処理学科)。他の方の感想ブログなんかを読んでいると感じるのですが、彼女は今回の話で活躍することを期待されていた子ですね。
「侑ちゃんだけのスクールアイドルになりたい」と言っていた歩夢の、侑以外のファン。
可愛くて、純粋で、いつも頑張っている。そんな歩夢に惹かれた彼女たちの熱意に、歩夢も「世界が広がる」ことの喜びを感じていきます。
歩夢「そう、思ってるのに」
歩夢と侑、それぞれが自分の世界を広げていくこと。それを喜んでいるのは、歩夢の本心でした。
そして、それが「普通」ってこともわかってる。
歩夢は「本心ではこうしたい」と「普通はこう」というのを、両方とも分かっている子です。そして、そのどちらかを選べる子です。
第1話より。普段着では、普通の服を選ぶ歩夢。
おなじく第1話より。「やってみたい!」と踏み出す歩夢。
でも、今回の歩夢の悩みは「やるかやらないか」ではありません。
世界が広がること。
侑と一緒であること。
どちらも歩夢が心から望んでいることであり、だからこそ葛藤している。
自分の好きを「恥ずかしい」と思うのは変わらない歩夢なのでした。
それでもどちらかを選ぶのなら、歩夢の場合は侑を選ぶ。
侑のスクールアイドルになること。それが大前提、一番の大きな気持ち。
前回見えたすれ違いは、何も侑がせつ菜と仲良くしていたから起きたものではありませんでした。
歩夢の知らない侑がいる。侑に夢ができた。
歩夢「それって、私と一緒じゃなくなるってことでしょう!?」
侑と一緒に進んでいきたい歩夢は、侑と一緒じゃないなら進めない。
歩夢「侑ちゃんが一緒じゃなきゃ、私は一歩も前に進めないよ……」
侑「そんなこと」
歩夢「あるよ!」
侑「……!」
歩夢「あるんだよ……」
侑も、歩夢の全てを知っているわけではありません。
歩夢が可愛いことも、頑張り屋なことも知っている。
けれど歩夢がどうして頑張れるのか、その全てを知っているわけではありません。
侑の「でも」に歩夢が口にしかけた一言は、言葉にしてはいけない一言。*6
一度は引いた侑でしたが、彼女もまた引く気はなくて。
このままでは、どこかで決定的な亀裂が入ってしまいそうでした。
変わらないもの
本当のワガママを、大好きを
自分を再びスクールアイドルにしてくれて、本気で幸せを願ってくれる。
だから、侑に悩みがあるのなら、聞いて、力になりたい。
そんなせつ菜でしたが、侑と歩夢の間には、踏み込めない絆がある。
それでも放っておけないのはせつ菜らしいですね。
そういえばアニガサキのせつ菜は案外、歩夢とはあまり話したことがないのかもしれません。璃奈に対しても第6話で「こういうお話できたの、初めてですね」と言っていますが、本当はもっと、せつ菜はみんなが思っていることを聞かせて欲しいのかも。*7
歩夢の表情は、少し硬い。
ファンのみんなのおかげで、世界が広がって、ステージが形になっていく。
その気持ちに応えて前に進むことは、せつ菜にとって楽しいこと。
一方、歩夢の気持ちはもう少し複雑でした。
侑とだから始められたスクールアイドル。
ファンのみんな、なんて思い浮かべられなくて。でも、侑のことを思い浮かべれば力が湧いてきた。それが「スクールアイドル・上原歩夢」だった。
けれど、そんな歩夢を良いって言ってくれる人がいて。今は歩夢も、ファンのみんなを思い浮かべることができてしまう。大好きな相手は侑だけじゃなくなって、そのことを嬉しいって感じてしまう自分がいる。
歩夢と侑、ずっと一緒だったふたりの距離が、離れている気がする。
思えば、せつ菜もそうでした。
スクールアイドルが好き。だから、ラブライブ!に出たくて、グループを作った。
せつ菜はスクールアイドルが大好きだったけれど、同じくらいグループのみんなのことが好きで。自分がいたらみんながラブライブ!を目指せないから、身を引く決断をしたのでした。
こんな感じ。どちらかしか選べないとなったとき、歩夢は①を、せつ菜は②を選んでしまったわけですね。
けれど好きになってしまったら、結局どちらの気持ちも止まらずに進んでしまう。止めても苦しいだけ。せつ菜自身も、そんなせつ菜に憧れてスクールアイドルになった歩夢も、きっとそう。
自分の“大好き”なスクールアイドル像も、“大好き”なみんなのことも、みんなみんな輝かせられる高みへ行けたなら。
きっと、それがせつ菜の野望。大好きの溢れる世界。
アニガサキ第3話「大好きを叫ぶ」のこと。 - 今日も主食はカロリーブロック
その気持ちを、叫びを目の前で見ていた歩夢。
矛盾する二つの“大好き”を、侑はどちらも救ってみせた。
そう、せつ菜回の第3話は「本質を見て屁理屈で守りきる」という回でした。
例えば、せつ菜の好きなスクールアイドルの本質は「ラブライブ!に出場すること」ではなくて「ファンがいて、スクールアイドルがいる」ということでした。視点を変えながら、真っ直ぐに“大好き”を裏切らない、そんな道を探してここまできた。
では、歩夢にとって。
侑と歩夢が離れていく気がするのは、物理的な距離と、かけられる時間の問題がありました。*8
でも、歩夢の好きの本質は「侑のことが大切」っていうことだと思うんですよ。物理的に隣にいることとか、長い間一緒にいるとか、それは「侑のことが大切」であることの結果でしかない。ちょうどラブライブ!という大会が、スクールアイドルにとって、結果の一つでしかないように。
せつ菜「始まったのなら、貫くのみです!」
この短い時間に、二人の間でどのような感情のやりとりがあったのかは、想像の域を出ません。それはもちろん。
止めちゃいけない。我慢しちゃいけない。
あの日、せつ菜をきっかけにスクールアイドルを始めた、最初の気持ち。
侑への気持ちも、ファンのみんなとの関係も、どちらも大切な思いを、我慢しない道を探せれば……。
これまでのことと、これからのこと
歩夢と侑、それぞれの気持ちを大切にしながら、二人の関係も大切にしたい。
だから、お互いがお互いを今までと同様に、あるいはそれ以上に大切に思っていることを確信できれば、問題ないはず。
そして、この二人がダッシュで駆け寄るシーンで「あ、大丈夫だな」と確信した私でした。
歩夢が言うより早く、侑と、みんながみせたかったフラワーロード。
侑は「相談されただけ」と言うけれど。
下の画像は第1話より。
それは、あの日の侑が夢見た、ふたりが共有した世界にどこか似ていました。
そして、“みんな”で作った舞台。
侑と、みんな。そのどちらもが、特別なスクールアイドルとして、歩夢を好きでいる。
ひとつのステージに、歩夢を取り巻くみんなの想いが同居している。
どんなことがあっても変わらないものも、増してく思いも、どっちも大切。それでいいんだ。
歩夢と同じ普通科から、音楽科に。
侑を想うスクールアイドルから、みんなのために歌うスクールアイドルに。
歩夢のおかげ。
侑ちゃんがいたから。
だから、ここからまた、次に進める。
季節は夏。
歩夢と侑もまた、それぞれの道を進むニジガクの同好会として、一歩進んだ。
そんな第12話でした。
終わりに
第12話は、これまでの虹ヶ咲を思い返しながら見る箇所の多い回でしたね。
第1話:ライブシーン
第2話:歩夢とかすみの特訓(未遂)
第3話:せつ菜の拳
第4話:解決しない問題を置いておいて練習に行こうとする(これは個人的にかなり印象的)
第5話:大切な人の気持ちが分からない
第6話:真剣な表情で感情の吐露を聞いているせつ菜
第7話:手を繋ぐ二人の画
第8話:スクールアイドルなんてもうできない
第9話:仲間でライバル(かすみ)
……まあ、探し出すと他の回もそうですが、特に今回は目白押しでした。内容も雰囲気も絵としてもそうですけども。
次回、ついに最終回。あとはもう楽しむだけですね!
早く見たいな〜!
ぶろっく
おまけ
生徒会と優木せつ菜を巻き込んでまで、何をしでかすつもりだ演劇部。
あー、いや、2枚目はただの生徒会&ボランティア会議かな。せつ菜はスクールアイドル同好会の部長として出ないといけないから、菜々は何か理由をでっち上げて副会長に代役を頼み、副会長はせつ菜と一緒に仕事をできるから嬉々として引き受けた、と。ふむふむ。
アニメ画像の出典:記載がない場合、すべてラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第11話(©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)より
*1:せつ菜を強調するような言い方になってしまっているのは、単純に私がこの3人の中で、せつ菜に一番感情移入しているからですが。
*2:一応さらっと解説しておくと、「私だけの」は歩夢と侑それぞれの道、「解き放した」はふたりの関係性の変化と成長、「昨日が」というのはスクールアイドルフェスティバル当日から見るとこれが昨日の出来事であることから。……と思ったら、これ2日前ですね。ニアミス。
*3:ところで、このシーンで歩夢が我に帰るシーンのきっかけになったのは、歩夢のスマホへの通知でした。侑のスマホは鳴っていないので、歩夢だけへの通知だったのでしょうが……誰からでしょうね。家族とか?それとも歩夢を手伝ってくれる誰かという可能性も、細やかながらあるのかなあ。
*4:侑の場合は考え込むときも声に出すことが多かったり、歩夢の場合はこの回でもやっているように笑顔で誤魔化してしまうことが多い印象です。ふたりともうわの空になっているシーンは初めてかもしれませんし、心の中に互いの存在がいかに根付いているかを強く感じさせられますね。
*5:どちらも、ふたりの「やりたいこと」に関わるシーンですね。
*6:最初の言葉や「ゆ」だったのか「(い)や」だったのかは定かではありませんが、仮に侑の「ゆ」だったとしたら、「侑ちゃんはもう、私の隣には、いてくれないの?」「侑ちゃんは、私の夢を一緒に見てくれるんじゃなかったの?」という言葉になっていたのかな。もしそうなら、これはスクスタ第15章の「今となっては、これはわがままかも知れないってわかっているけど、あなたにとって本当に大切なことって何なの?」というニュアンスの問いとは全く違う、侑の主体性を否定する言葉になってしまう。険しい。
*7:にじよん等では歩夢とせつ菜のライバル関係は非常に素敵なので、この二人の関わりを感じたい方は必見ですね。ところでせつ菜が「幼馴染の不仲! それを解決するために奔走する戦友が私ですね!!!」とか言い出さないので、ちょっと安心しました(それはそう)。
*8:相対的に互いの存在が小さくなるのでは、ということについては……歩夢と侑が互いのことでこんなに真剣になっている姿を見たら、既に我々視点としては、もう否定してもいいよね? そして、後々歩夢も自身で解決するのでした。