アニガサキ2期第7話「夢の記憶」のこと。
はじめに
アニガサキスタッフさん……ここまできたら、分かってますね?
幸せを生み出すために
栞子の姉、薫子はかつて、スクールアイドルとして活動していました。
彼女は三年間全力を尽くしたものの、最終的に結果を残すことはできず。
当時小学生*1であり、そもそも他人の心の機微に明るいとはいえない栞子にとって、姉の涙は「後悔」に映っていた。
実際、悔しいのは間違いない。
けれど、スクールアイドルとしての結果、すなわち「ラブライブ!」で成績を残すことができるかという点で、相対的に薫子の能力は、全国レベルにはなかったのだと思う。
そして栞子は、ファンとしての贔屓目を抜きにして、その事実を受け入れてしまえる。
そうして彼女の行き着いた結論はこうだ。
「向いていないことをして、後悔をするべきではない」
大好きな人のそんな姿を見たくない。自分も、そうありたくない。薫子のその後を知らない栞子にとって、そう思うのは自然なことでした。
幸か不幸か、栞子には人の適性を見抜くだけの目が備わっていました。ならば、それを活かして人のためになるように振る舞うのが、全員にとって最も幸せになる道だと。
それは、見方によっては人を導くような道を歩くということ。
姉妹だからなのか、薫子もまた、教師として人を導く道を選んでいました。
「スポットライトの眩しさも。
歌を届ける喜びも。
可愛い妹に『すごい』って言ってもらう誇らしさも。
スクールアイドルをやって知ることができたんだから。」
「それで今は教師になって、たくさんの生徒を、あなたを。応援できる人になりたい、って思ってる」
今回に限らず、こういう「はっ」みたいなシーンが好きなんですけど、私。
ここで栞子は、薫子の悔しさが「やらなければよかった」という類のものではなく、むしろこれから自分も大切な人もハッピーにするためのエネルギーになっている、ということに気づくんですね。
スクールアイドルを通して、姉は自分が目指す理想に先に辿り着いて、行動に移していたんです。
結果を出すことだけがスクールアイドルの、もっといえば人間としての、自分や姉の、幸せではない。
「やりたい気持ちが、あなたにあるんなら、それだって十分適性なんじゃない?」
この点については、前回少しだけヒントが隠れていました。
「私は会長が学園のためにたくさん貢献されてきたことも、せつ菜さんがスクールアイドルとして、人気を獲得していることも知っています。どちらにも適性があって、皆さんを幸せにできている。その邪魔をする理由など、ありません」
アニガサキ2期第6話「“大好き”の選択を」 より
これは栞子がせつ菜を評した言葉。
せつ菜にファンが多いことを適性として肯定してはいますが、実はせつ菜も元々は「ラブライブ!」の出場を目指すひとりでした。
けれど、そうではない在り方をする今のせつ菜を栞子は肯定的に捉えている。色々なスクールアイドルがいてもいいのだという考え方は既に栞子の中にあって*2、そのことを自分にも当てはめて考えてあげられるようになったのが、今回の栞子が変わっていった様子なのかなと。
おまけ
スクスタではアニガサキに先んじて栞子が登場していましたが、2019年10月の登場から2020年8月の加入に至るまで、彼女は「自分なりの正義を持っているが、全体的には同好会と対立しがちな生徒」として描かれていまして。
特にニジガクの1stライブを前に描かれたシナリオで決定的な対立が起こるのですが、そのなかで彼女は、生徒会長である中川菜々が打ち出したとある公約に関して、こんな独り言を漏らしていました。
(第9章第8話「戻ってきて、せつ菜ちゃん!」より。)
菜々はこの時、かなり自分のことを犠牲にした、無茶な公約を打ち出していました。
その気持ちや行動力を栞子は認めると同時に、それでも「自分のすることで自分も幸せになれないといけない」と菜々のことを責めるんですよね。
で、今回。
「みんなの夢を叶える日だよね」
「こーんなに頑張ってくれた栞子ちゃんの夢も叶わなきゃ、スクールアイドルフェスティバルは成功とは言えないよね?」
自信のなさに「適性」という言い訳をしながら、やりたいこと・ときめきから遠ざかろうという栞子に皆が口にした言葉は、作品を超えたブーメランのような……いや、スクスタとアニガサキはいつもそんな「そこがひっくり返るんか〜い!」みたいな関係ですが、今回は時に、ドキッとしました。
アニガサキとは全く違う、ピリピリしながらも各々の視点で全力で生きているスクスタも、アニガサキと一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。好みは分かれそうな気がしますが*3、この二人が絆を深めていく様(そして生徒会書記・右月と左月の暴走っぷり)も見応えがあります。
おまけ2
あとは、ただただ好きなところ3選。
距離感のバグり散らかした二人。
本当にわかる人にしかわからない話をすると、ポケモンのロイヤルマスク*4みたいな趣がありますね。
こちらは逆に、いつも通りすぎて安心する二人。
スクフェス時代、分室時代も含めて安心感が段違い。もっと絡んでほしいですね。
「あら、栞子。……どうしたの? 何かあった?」
「いえ、何も」
お姉ちゃん、一体栞子の何に気付いたのだろう。
元々が表情の変化が大きくはない栞子なのですが、パッと見てただならぬ雰囲気を感じるあたり、やはり姉というべきか、それとも教師の卵ゆえなのか。
おわりに
終盤にはランジュの姿も印象的に描かれていました。
薫子、栞子とランジュは幼馴染なのですが、薫子が栞子からスクールアイドル時代に受け取っていたものをランジュも感じているのなら、なんとなく表情の正体も掴めそうな気がしますね。
他にもミアの件、侑のこだわり、アニガサキも折り返しですが、まだまだ目が離せませんね。
ぶろっく
*1:薫子は教育実習生であることから、日本で教員免許を取得することを目指している点を考慮すると大学四年生以上の年齢である可能性が高い。高校一年生である栞子との年齢差は6歳以上であり、薫子が18歳の時、栞子は12歳以下ということになる。
*2:それは、彼女がランジュを友人として気にかけていることとも関係があるかもしれませんね。
*3:ストーリーの内容もそうですし、文のスタイルとか、色々なところで合わないという話は聞くので、本当に好みは分かれそう。
*4:ゲーム及びアニメ「ポケットモンスター サン・ムーン」に登場する、プロレスラー風の男。彼は舞台となるアローラ地方で人気の「バトルロイヤル」という競技でチャンピオンに君臨し、絶大な人気を博しているのだが、その正体は主人公たちにとって極めて身近なある人物なのである。