今日も主食はカロリーブロック

ラブライブ!やラブライブ!サンシャイン!!に関することを、時折思いつきで書いていこうと思います。

渡辺曜と「1」 ……Beginner’s Sailingから渡辺曜の「輝きへの一歩」を考える話。

 

 

 

※記事中に、以下のネタバレが含まれます。お気をつけください。

・アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」1期、2期のネタバレ

ラブライブ!サンシャイン!! 2nd season Blu-ray第4巻特装限定版特典CD収録曲「Beginner’s Sailing」の歌詞のネタバレ

・その他、ラブライブ!関連楽曲に関する軽微なネタバレ

 

 

 

 

 

1.はじめに

 

 こんにちは、ぶろっくです。

 世間ではもうすぐ3rdライブツアーであります。

 アニメ二期後初のナンバリングライブということで、セットリストや演出に期待が高まりますね。

 私も当日はどの日程もお仕事なのですが、円盤で彼女達のキセキを目にするのを楽しみにしています。

 

 さて、今回ちょっと珍しく、「歌詞全部については触れない」という記事にしてみました。

 いろいろ試している一環ですが、「歌詞について」というよりは渡辺曜について」という色の方が強いかと思います。

 

 少しでも曜ちゃんの行動のヒントに、あるいは曲の読み解きのヒントに。

 ならなくても、シンプルな応援歌で終わらないこの曲に、興味を持っていただければ幸いです。

 

 

 

 

2.曲について

 2.1.曲の概要

 

 さて、今回取り上げるのはこちら。

 

 


【試聴動画】「ラブライブ!サンシャイン!!」TVアニメ2期Blu-ray第4巻特装限定版 封入特典・録り下ろしAqoursオリジナルソングCD④「Beginner's Sailing」

 

 渡辺曜(CV:斉藤朱夏)の「Beginner’s Sailing」です。

 

  2.1.1. 作編曲者について

 作詞はご存知、畑亜貴さん。

 作編曲はArte Refact酒井拓也さん。

 

 酒井拓也さんは、同じく二期BD4巻に収録された「Aqours WAVE」の挿入歌「MIRACLE WAVE」の作編曲を務めておられます。 

 千歌と果南を中心とした物語の色が強い「MIRACLE WAVE」。

 「Beginner’s Sailing」は曲調や音色の面からは、渡辺曜のためのMIRACLE WAVE」とでもいうべき楽曲です。

 サビの部分のカノン進行は「MIRACLE WAVE」とも対応しています。ちょっと偶然とは思えないシンクロ感ですね。

 カノンコードの曲自体は他にも山ほどあるんですけどね。 

 

(他にも酒井拓也さんは、ラブライブ!関連で「Guilty Eyes Fever」「ハミングフレンド」の編曲、PS3用ゲームソフト「神様と運命革命のパラドクス」のキャラクターソングCDでは「ここで待ってるよ」作編曲、「コドクの回廊」編曲も担当されております。)

 

 

  2.1.2.曲のメッセージについて

 全体を通して、「自分の『好き』の方へ、一歩踏み出そう」という曲です。

 行き先はまだハッキリしないけれど、自分のチカラを信じて、勇気を出していこう。

 いかにも前向き、どこへでも飛び込んでいっちゃう、そんな曜の性質を反映したような応援歌です。

 

 

 また、曜らしい特徴的な部分といえば、曲名にもなっている、ここです。

 

一緒に Sailing 

 

 

 誰か(アニメ作中では主に千歌)を中心とした話の中にいることが多い曜。

 アニメ以外でも、自分からやりたいことでなくとも進んで参加することについて、こういった説明がされています。

 だってさ昔から、子どもの人数が少ないこのあたりじゃあ、ドッジでもバスケでも、なにか新しく物事を始めようっていう時にはなるべくみんなで協力し合って参加しないと、何にも成立しなくなっちゃうんだよね。

(ラブライブ!サンシャイン!! School idol diary 千歌・梨子・曜 編 P46 l2)

 

 BD特典のSID(Sea Side Diary)やコミック版では印象的に描かれているこの内容。

 「誰かが何かを始めようというときには力になる」のは、曜の中で重要な動機です。

 曜のAqoursに対する根本的な動機は、ずっと抱えていた「千歌ちゃんと一緒に、夢中で何かやりたい(一期1話)」「これでやっと一緒にできる(一期11話)」という想い。

 誰かと一緒に輝きを作り上げていくのが、曜の求める輝き方であるようです。

 

 補足として少し脱線しますが、他のメンバーのソロ曲が自分のことを歌っている傾向にあるのに対して、曜のソロ曲だけが誰かの応援という色を強く持っています。

 それは、曜のスクールアイドルに対する動機が「あなたと一緒に輝きたい」であるから。

 ちなみに、他のメンバーのはじめの動機はわかりやすいものが多く、「スクールアイドルとして輝きたい(千歌、ルビィ、花丸)」「廃校の危機から学校を救いたい(ダイヤ、果南、鞠莉)」です。

 曜・梨子・善子の3人はそれぞれ「自分らしくあるためにスクールアイドルという場を借りている」という動機を持っています。

 

 2.2. 歌詞について

 気になった部分だけをピックアップして取り上げて考察していきます。

 順番は必ずしも登場順ではありませんので、ご了承ください。

 

  2.2.1. 「笑わないよ!」

 視聴ではサビの後半、フルで聴くと真っ先に聴こえてくるのがこの歌詞。

 曜が、自分が他人からどう見られていると考えているのか。

 それを踏まえると、この一言が大きな意味を持っていることが分かります。 

 

(鞠莉の「なぜ(千歌が曜と二人でいることを嫌がった、と考えたの)?」を受けて)

 私、全然そんなことないんだけど、なんか要領いいって思われてることが多くて。

 だから、そういう子と一緒にって、やりにくいのかな、って。

(一期11話Bパートより)

 

 鞠莉には「なに一人で勝手に決めつけてるんですか」と諭されますが、もしかしたら何かそういった経験をしてきているのかもしれませんね。

 この「笑わないよ!」は、そんな曜の保険であり、気遣いであり、本心なのだと思います。

 

 

  2.2.2. 「ココロは知ってる 勇気の出し方」

 この歌詞は「誰が」知ってるのかが、解釈の上で重要になってきます。

 前後の歌詞か、対応する歌詞か、どちらを重視するかで読み方が変わります。

 

① 「私(曜)」が知ってる

 

 この歌詞に続くのは、以下の説明です。

つまり明日の朝 

昨日の自分がんばったと言えるように

 曜が引き続き説明しているので、「曜が知っているものを『君』と共有して、背中を押す」という読み方ができます。

 一緒に輝くための手助けをするということで、こちらの方が非常に曜ソロらしい解釈かと思います。

 

②「君」が知ってる

 本当は君も、勇気の出し方を知っているんだよ、それに気づいて、ということ。

自分がもつチカラが はやく出たがってること

 二番で対応する歌詞はこちらです。

 それを踏まえると、「チカラを(外に)出してあげることが『勇気を出す』ということなんだよ」というふうに読むことができます。

 

 

 どちらの解釈にしても、「きっかけを作って気づいてもらう」という点は共通していますね。

 こうやって「君」と一緒に勇気を出そうとすることが、曜の輝き方に繋がります。

 

 

   2.2.3. 「そんな顔して語ってるんだね もう胸は 遠くの青い空へ描いてるよ」

 ここでは、「語ってる」と「青い空」が近くにあることから、

「語ってる」はユメ語るよりユメ歌おうを、

「青い空へ」は青空Jumping Heartを、それぞれ連想させますね。

 

ユメ語るよりユメ歌おう」から「語る(言葉)」の意味を抽出すると、

「熱い想いを持っていて、けれど形にできていない状態」

ということになります。

 (「歌にし」てはじめて、「やってみたら意外とハッピーみつかる」という状態を導きます。)

 

青空Jumping Heart」からは曲全体の意味を取っていいと思います。

 最後の歌詞から

みんなとなら 説明はできないけど だいじょうぶさ… まっしぐら!

を抽出しておきましょう。

 

 繋げて意訳すると、「自分がもつチカラが はやく出たがってること」と同じ内容を歌っています。

 アニメ一期のOPからアニメとの繋がりを、EDからはライブでの使われ方から聴き手の「君」との繋がりを、それぞれ感じることができます。

 

 

  2.2.4. 「キモチだけでもいいんじゃない?」

 歌詞の中には何度か登場する。「できなくてもいい」というニュアンスの言葉。

カタチから入っていいんじゃない?

最初はヘンでも気にしない

 ダメで元々だってさ

キモチだけでもいいんじゃない?

最初はできないことだらけ

ポカは想定内だってさ

 

 これらは共通して「最初は」ということが前提ですね。

 キモチとカタチから入ったのは、まさに千歌とはじめたスクールアイドル活動を想起させます。

 

 

 留意したいのは、「できなくても、そのままでいい」わけではないということ。

 そのことは、一期8話ではっきりと読み取ることができます。

(展望台にて、スクールアイドルのイベントに入賞できず)

 私ね、Saint Snowを見たときに思ったの。

 これがトップレベルのスクールアイドルなんだって。このくらいできなきゃダメなんだって。

 なのに、入賞すらしていなかった。あの人たちのレベルでも、無理なんだって。

 

(得票数0の結果を受け、東京に呼ばれパフォーマンスしたことに胸を張ろうという千歌に)

 千歌ちゃん。千歌ちゃんは、くやしくないの。 ……くやしくないの?

 

(一期8話Aパートより)

 

 このあと、「みんなであそこに立てて嬉しかった、満足だ」と語る千歌に、曜は「そっか……」と俯きながら返します。

 共に輝きを目指す千歌には、輝けなかったイマに満足してほしくなかった。

 この「くやしくないの?」からはそんな気持ちを読み取ることができます。

 

 ですが「Beginner's Sailing」では「できなくて当たり前、恐れずに踏み出そう」という気持ちを歌っています。

 これには、曜の「一歩目」観とでもいうようなものが影響しています。

 

 

3.「失敗? それこそ一歩目だ!」

 先ほどまでの考察の続きでもありますが、あえて区切らせていただきました。

 この曲最大の考察ポイントは、実はこの歌詞にあります。

 

 Aqoursにとって「1」という数字は、非常に大きな意味を持っています。

 

 東京のイベントで得票数「0」を、地区予備予選突破後には学校説明会参加希望者「0」を突きつけられたAqoursの9人。

 はじまりの物語である一期では、輝いてそれを「1」にすることを目指していきました。

 

 しかし、この曲で曜は「失敗? それこそ一歩目だ!」と歌っています。

 失敗を「それこそ一歩目」というからには、反対に「それ以外の俗にいう一歩目」とは何でしょう。

 

・「1」という数字を出したところが一歩目

・はじめたところが一歩目

 

 あまり思いつきませんが、こんなところでしょうか。

 まず、「1」という数字を出したところが一歩目というのは、具体的には一期13話です。「MIRAI TICKET」という曲でAqoursが未来への航海を始め、そして説明会の参加希望者が「1」になる。

 始めたところが一歩目というのは、スクールアイドルを始めたとき、はじめてのライブを行ったとき、が該当します。

 

 

 では、曜のいう「失敗が一歩目」とはなんでしょう。

 それは失敗から学び、次に同じ轍を踏まないよう活かす、ということ。

 と言っても「ふーん」という感じなので、二つほど例を出しましょう。

 

 先ほど一期8話の話をしたので、まずは千歌の話をしましょう。

 輝きと廃校阻止を目指した千歌にとって、「0」を突きつけられた東京のイベントはまさに「失敗」でした。

 しかし、千歌はその結果を受けて「満足だ」と返答します。

 「失敗? それこそ一歩目だ!」に照らし合わせると、それでは失敗ではないことになってしまうので、千歌は一歩目を踏み出さないことになります。

 曜の「くやしくないの?」「やめる?」は、その失敗を失敗として刻んでもらいたいための言葉であったわけです。

 

 ここで満足してしまったら、千歌ちゃんは輝きへの一歩目を踏み出す機会を失ってしまったことになる

 そのことが、曜に厳しい態度を取らせたのだと思います。

 

 

 二例目は、曜自身のケースです。

 自分では「要領がいいわけではない」と考えている曜ですが、ご存知のように能力的には極めて要領がいいです。作中で明確に何かを失敗するシーンは、数えるほどしかありません。

 そんな彼女の最大の失敗は一期11話Aパート、梨子の代役を勤めることに決まった曜が、千歌とステップの確認をするシーンです。

千歌「私がいけないの。どうしても梨子ちゃんと練習してた歩幅で動いちゃって。……もう一度やってみよう、じゃあいくよ!」

 曜「千歌ちゃん」

千歌「うん?」

 曜「もう一度、梨子ちゃんと練習してた通りにやってみて?」

 

(一期11話 Aパートより)

 

 ここで曜は梨子の動きでステップを踏むことで、千歌との動きを合わせることに成功します。正直、恐るべき要領の良さですね。

 しかしこれは「失敗を避けた」ので、「千歌と一緒に輝く」ために失敗する(= 一歩目を踏み出す)機会を失ってしまいました。

 その後、梨子と千歌の言葉を受けて、自分のステップで千歌と二人のダンスを作らなかったことが「失敗」だったと理解することになります。

 この「失敗」を一歩目として踏み出した曜は、結果的には千歌と二人のステップでダンスを作り上げます。

 

 一期8話の千歌が、東京の大会を「満足だよ」と語って失敗を認めなかった例とよく似ていますが、少し構図が異なります。

 

<参考> 

千歌の場合

東京の「0」(失敗)

→「満足だよ」(失敗と認めない)

→「くやしい!」(ここではじめて失敗が「一歩目」として意味を持つ)

 

曜の場合

ダンスで動きが合わない(失敗1)

→梨子の動きに合わせて踊る(失敗1を回避 = 失敗2)

→梨子と千歌の言葉から、千歌と二人のステップを作り直す(失敗2が「一歩目」として意味を持つ)

 

 

 

 なんとなく、 この「失敗?それこそ一歩目だ!」について、お分りいただけたでしょうか。

 平たく言えば「やってみて、ダメだったらそれを糧にしてよくしていこう」というのが「失敗? それこそ一歩目だ!」ですが、こうした経験の上に成立している考え方なのですね。 

 

 

 

3.終わりに

 いかがでしたでしょうか。

 歌詞と人物像、どっちについても語るべきことはもっとあったのかもしれませんが。

 

 しばしば「掴み所がない」と称される曜ちゃんなのですが、そんな彼女の考え方に触れてみたいと思って今回の記事を書きました。

「多分曜ちゃんはそこまで意識して考えていません」と言われれば、それまでです。正直、私もそう思います。

 ただ、失敗の少ない曜ちゃんが「失敗? それこそ一歩目だ!」と歌っているのは彼女に明確な失敗があったからなのかなと。だとしたらあの場面が該当するのではないかなと、そういうところから書いています。

 

 次に曜ちゃんの記事を書くときは「渡辺曜と『触れる』というコミュニケーション」について考えたいと思います。予定は未定です。

 BD2期特典曲まとめ記事みたいなのも書こうと思っていますが、そちらは7巻発売後に、と思っております。

 

 ではまたいつか。

 

 

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